営業権(販売権)譲渡の流れとは?価額の評価方法や税金についても一挙公開!
2022.04.21
営業権(販売権)とは営業を行う上で保有している財産そのものであり、一般的には「のれん」とも言われています。
この営業権(販売権)を譲り渡すことを「営業権譲渡」と言い、無形の財産価値としてM&Aによる取引でも重要視されているのです。
本記事ではこの営業権譲渡の流れと共に、価額の評価方法や税金についてまとめて紹介していきます。
営業権(販売権)譲渡とは?
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冒頭でも営業権について触れましたが、「そもそも営業権とは?」と、あまり詳しくは理解していない方もいらっしゃるでしょう。
細かく説明すると、企業が所有している財産価値には有形のものと無形のものが存在しています。
有形の財産価値 | 固定資産(土地や建物など)、現金預金、保険積立金、在庫など |
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無形の財産価値 | 立地条件、特殊技術やノウハウ、伝統や社会的信用、取引先など |
上記に挙げた無形の財産価値とは目に見えない財産ということになりますね。
これらを総称して「営業権」と言い、事業の全て又は一部を売却する際に営業権を引き渡すことを「営業権譲渡」と言います。
営業権(販売権)とのれんの違いとは?
「営業権とのれんの違いとは何ですか?」という声をよく耳にしますが、現在では会計用語上「営業権」と表現することは少なく、ほぼ同じ意味合いとして「のれん」という言葉に代えられたと認識してください。
仮に有形の財産として土地や建物があり、その価値が2億円の事業があるとします。
しかし、事業というのは目に見えない技術やノウハウ、人材や取引先が不可欠ですよね。
このような無形の財産によって年間利益を3億円上げているとしたら、当然この事業の総合的な価値は2億円以上のものになってくるでしょう。
そこで、この事業がM&Aによって9億円で売買されたとすれば、有形の財産価値との差額は7億円ということになります。
この差額のことを「のれん代」と呼び、事業売買に携わる際には必ず理解をしておきたい基本的な内容となっているのです。
営業権(販売権)譲渡の流れについて
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営業権(販売権)譲渡を行うにはM&A専門の仲介業者を利用するのが一般的です。主な流れは以下のようになります。
- ・買い手企業を決める
- ・買い手企業によるデューデリジェンスが行われる
- ・交渉と共に営業権譲渡契約書の作成
- ・株主総会に営業権譲渡を承諾してもらう
- ・営業権を譲渡する日に手続きを行う
1.買い手企業を決める
M&Aの仲介業者と共に、営業権(販売権)譲渡に最適とされる買い手企業候補を見つけていきます。
最初から一つの企業を選ぶのではなく、いくつかの候補から吟味して絞っていく方法が健全でしょう。
2.買い手企業によるデューデリジェンスが行われる
デューデリジェンスとは、分かりやすくいうと売り手企業の査定作業です。
営業権(販売権)譲渡の交渉前に、企業としての価値や運営状況、買収によるリスクなどを確認する重要な作業ということになりますね。
主に公認会計士や弁護士といった専門家によって査定が行われ、問題がなければ次の工程に移ります。
3.交渉と共に営業権譲渡契約書の作成
M&A仲介業者による仲介の元、売り手企業と買い手企業で営業権(販売権)譲渡の条件や価格を交渉していきます。
交渉による決定内容と共に営業権譲渡契約書を作成し、記載内容に双方が同意すれば「営業権譲渡契約書の締結」が行われるという流れです。
基本的には「営業権譲渡契約書の締結」が行われてしまうと、条件が変更されることはありません。
そのため営業権譲渡契約書の作成は専門家と進め、不明な点や曖昧な内容は双方が納得いくまで交渉して決めていきましょう。
4.株主総会に営業権譲渡を承諾してもらう
交渉によって締結された営業権譲渡契約書の内容は、株主総会による承諾が必要です。
内容が承諾されれば譲渡が正式に決定されます。
5.営業権(販売権)を譲渡する日に手続きを行う
営業権譲渡契約書の内容に記載されている営業権譲渡日より各手続きが行われます。
営業権(販売権)の引き継ぎや代金の支払いなどが完了次第、営業権(販売権)の譲渡は終了です。
営業権(販売権)譲渡における価格の評価方法について
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では、実際に営業権(販売権)譲渡価格の評価はどのようにして決められているのでしょうか?
営業権(販売権)譲渡における価格の評価方法は以下のような方法があります。
時価純資産額 | 総資産をすべて時価で評価して合計し、同様に時価評価した負債を差し引いたもの |
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超過収益還元法 | 平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額×0.05 |
利益年倍法 | 時価純資産+修正営業利益×3〜5年分(倍率は買い手次第) |
DCF法 | 企業が生み出すフリーキャッシュフローの期待値を、WACC(加重平均資本コスト)で割り引いた現在の価値 |
キャッシュ・フローとは現金の流れを意味し、主に企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。
ここで説明している「時価純資産額」とは、本記事で説明している有形の財産価値にあたるものとして解釈してください。
営業権(販売権)譲渡の価額算出には答えが定まっていない
今回紹介しているのはあくまで算出方法の一般的な方法であり、実際には複雑な計算式を用いたり公認会計士による理論展開がされるようなことはありません。
現に赤字の会社であっても、買い手にとって価値があると認められれば高値で売買が成立するケースが多くあります。
無形の財産価値というのはまさに「実体のない価値」であるため、買い手の見立て次第でバラバラです。
例えるならば、人手不足に困っている企業にとって、優秀な人材が揃っている事業はとても需要があります。
しかし、十分に優秀な人材が揃っている企業にとって、人材を増やすメリットは全くないため、そういった企業は価値を感じないでしょう。
このように、営業権(販売権)譲渡の価額というのは買い手にとっては一長一短でしかありません。
重要なのは、買い手と売り手にとってどれだけのシナジー効果が発揮できるか?ということになるのではないでしょうか。
営業権(販売権)譲渡にかかる税金とは?
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無形の財産価値とはいえ、営業権(販売権)譲渡には税金がかかります。
最後に買い手、売り手の税金と、所得区分による所得税について紹介していきます。
買い手にかかる税金について
営業権(販売権)譲渡の際に固定資産を含んでいた場合には、登録免許税や不動産所税がかかり、資産には消費税が課せられます。
また、営業権(販売権)の価額は計上後に5年間で均等償却(損金算入)し、差額負債調整勘定についても5年間で均等償却(益金算入)することになります。
売り手にかかる税金について
売り手側にかかる税金は「法人税と消費税」の2種類です。
法人税
法人税は営業権(販売権)譲渡における対価として発生します。
基本的には現金で支払われるのが一般的ですが、株式や現物などで支払われる場合もあるようです。
また、営業権(販売権)譲渡で発生した収益は、法人所得として課税対象となります。
消費税
営業権(販売権)は課税対象となっているため、2020年現在では消費税10%が発生します。
税率が変わる時期には十分注意をするようにしましょう。
所得区分別の所得税
所得区分別の所得税に関しては以下のようになっています。
一時所得 | 営利目的で生じた所得以外の所得(賞金など) |
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譲渡所得 | 資産の譲渡による所得 |
山林所得 | 山林の伐採、もしくは譲渡による所得 |
退職所得 | 退職手当や一時恩給など、退職に関連して受ける給与による所得 |
給与所得 | 俸給、給料、賃金、賞与などの給与による所得 |
事業所得 | 事業上で発生した収益による所得 |
不動産所得 | 建物や土地などの不動産に関連する所得 |
配当所得 | 法人から受ける利益配当や剰余金の分配、投資信託及び特定目的信託の収益分配による所得 |
仕訳利子所得 | 銀行預金の利子に対する利益所得 |
雑所得 | 上記の所得に該当しない所得(年金など) |
まとめ
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本記事では営業権(販売権)譲渡の流れと共に、価額の評価方法や税金についても紹介してきました。
M&Aによる営業権譲渡は目に見える資産価値だけではなく、無形の財産価値である営業権(のれん)の価値がいかにシナジー効果を発揮できるものであるか?ということが重要となるでしょう。
また、営業権(販売権)譲渡における税金や消費税を視野に入れなかったことで、資産に苦しむケースもあります。
専門家との相談も怠らず、計画的な営業権(販売権)譲渡を心がけましょう。
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Originally posted 2020-12-29 15:06:07.
2018年からGrowthM&Aを運営するAIGATE株式会社にジョイン。
サイト売買/ECサイト/D2CのM&Aを得意分野とし、数多くのM&Aに携わってきた。
また、自身もメディアを立ち上げグロースさせた経験から、有益な情報を発信している。