事業承継を行うには?引継ぎ先の選び方や成功のポイント

2022.04.21

会社経営を行っていると、やがて後継者の問題を考えなくてはならなくなります。それをうまく行わないと、たちまち経営の危機に陥ってしまいます。そして、その問題を解決する有効な手段として挙げられるのが事業承継です。ただ、事業承継といっても具体的に何をすればよいのかよくわからないという人も多いはずです。そこで、そもそも事業承継とはどのようなもので、それを成功させるためにはどういったポイントを押さえておけばよいのかについて紹介をしていきます。

1.事業承継の特徴や目的とは?

事業承継とは、事業を後継者に引き継がせることを指します。ただ、それは次の社長を誰にするかといったことだけを意味するわけではありません。同時に、会社の経営権そのものである自社株を誰に譲渡するのか、後継者の教育をどのように行っていくのかといった問題も考えなくてはならなくなるのです。ちなみに、事業承継においては自社株のほかに、会社・webサイト・不動産・運転資金など、事業用資産のすべてを承継することが可能です。

また、事業承継というと、相続税対策というイメージが強いものですが、両者はイコールで結び付けられるものではありません。あくまでも、相続税対策の手段の一部として事業承継という選択肢があるというだけにすぎず、事業承継自体の目的は後継者や次の世代へと事業を引き継がせることにあります。したがって、事業承継の際には相続税の対象となるもののほかに、経営理念や経営ノウハウ、あるいは人脈や顧客情報などといったものも引き継ぐことになります。

2.事業承継対策をしておく必要性

大企業の場合、事業承継が問題になることはあまりありません。なぜなら、次代の代表取締役候補は数多く存在しており、代表の交代も比較的頻繁に行われているからです。それに、大企業では会社のトップに直接依存している部分が少ないため、急に代表が変わったとしても業務が停滞するといったことはあまりないはずです。一方、中小企業の場合、会社の運営を経営者に依存している部分が大きいため、経営者の交代はしばしば現場に深刻な影響を与えてしまいます。

よくあるのが、若い頃に起業した経営者が長年ワンマン経営を続けていたものの、急に倒れてしまって次世代への交代を余儀なくされたといったパターンです。この場合、後継者が決まっていなかったり、決まっていても十分な準備が行われていなかったりすると、大きな混乱をもたらしてしまいます。実際、このような事業承継問題は年々深刻化しており、それは中小企業の廃業者数が増加している事実からみても明らかです。ちなみに、そのなかには高齢の経営者の後継者がいないために廃業届を出すといったケースが多く含まれています。そうした事態を防ぐためにも、事業承継の早期対策が必要なのです。

また、事業承継はただ行えばよいというわけではありません。それに失敗すると大きな損失を発生させる可能性があるため、そのリスクをいかに回避するかを考えることが大切です。そもそも、なぜ事業承継問題が深刻化し、それに伴う廃業がこれだけ多いのかというと、過度なワンマン経営で後継者が見つけられない、あるいは中小企業であるが故に経営状態が安定せずに破綻するといったことが影響しています。こうした問題は一朝一夕に解決することではないため、いかに早く事業承継の対策を行うかがより一層重要になってくるわけです。

3.事業承継のメリットとデメリット

事業承継の早期対策は確かに重要です。しかし、事業承継にはデメリットも存在します。その事実を知らずに行うと、思わぬ落とし穴にはまるおそれがあります。それを防ぐには、あらかじめ事業承継のメリット・デメリットについてきちんと把握しておくことが大切です。

3-1.事業承継におけるメリットとは?

ある日突然、経営者が変わったとします。すると、当然、そこで働く従業員は違和感を覚えて大いに戸惑うことになります。また、対外的な信用を得ることができずに、金融機関の融資条件が厳しくなったり、取引先から支払い条件の変更を求められたりするといった事態になってしまいがちです。その点、事業承継であれば信頼している相手に事業を引き継ぐことができるので安心です。そうすると、従業員の理解を得やすくなり、対外的な信用も損なわずにすみます。それに、親族や従業員への承継であれば、気心が知れているので業務の引き継ぎもスムーズです。

一方、事業承継にはM&Aを利用するという手もあります。M&Aというとシェア拡大のための企業買収を連想しがちですが、決してそれだけの目的で行うものではありません。後継者のいない中小企業が大手企業に対して事業譲渡や合併などを申し入れるケースが増えているのです。この方法を選択すると、事業を清算するのに比べて創業者の手取額が大きくなり、利潤の最大化が図れるというメリットがあります。また、事業を清算すると従業員を解雇せざるを得なくなりますが、これなら安定継続雇用が可能になってきます。

3-2.事業承継におけるデメリットとは?

後継者を自由に選べるのは事業承継のメリットのひとつですが、実際問題として適任者と思える人物を探すのは容易ではありません。仮に、身内や従業員のなかから後継者を選ぼうとしても、そのなかに適任者がいないといったケースがあります。そうなると、外部から適当な人物を招き入れるしかなくなりますが、その場合は社内で受け入れてもらえない可能性が高くなります。仮に、すべての条件を満たす人物がいたとしても、事業承継をするというのは簡単なことではありません。経営者としての基礎を教え込み、具体的な仕事の引き継ぎをして取引先や金融機関に了承を得るといった具合に、長い時間がかかります。以上のように、実行するのにかなりの手間がかかる点が事業承継の手メリットです。

4.事業承継の傾向と現状

一昔前までは親の事業は子どもが引き継ぐというのが当たり前でした。実際、中小企業庁の資料によると、昭和の時代には8割以上の法人は息子・娘、あるいはそれ以外の親族が引き継いでいたという数字が出ています。ところが、2010年~2015年のデータを見ると、親族内承継が行われているのはわずか35%です。これを見ただけでも、親族内承継が急速に減っているのは明らかです。その原因としては「子どもには自由な道を進んでほしい」「子どもに経営教育をしても自分の引退までに間に合わない」などといった理由から親族内承継を希望する経営者が減っていることが挙げられます。また、親が承継を希望していたとしても「自分は経営に向いていない」として、それを拒否するケースも少なくありません。

一方で、増えているのが従業員や社外の第三者による親族外承継です。同じく2010年~2015年のデータを見ると、その数字は65%となっており、親族承継との割合が完全に逆転していることがわかります。さらに、M&Aによる事業承継も増加傾向にあります。

5.事業承継を成功させるためには?

事業承継を行う際には、親族内承継・親族外承継・M&Aの利用といった3つの選択肢があります。そこで、事業承継を成功させるためのポイントを選択肢ごとに分け、それぞれ紹介をしていきます。

5-1.親族内承継のポイント

まず、親族内で事業承継を行う場合は後継者教育に時間をかけ、経営権の移行がスムーズに行えるように準備をしておくことが重要になってきます。したがって、後継者の教育はなるべく早い段階で始めるのが賢明です。また、事業を承継したあとに後継者の決定権を安定させるためには株式を集中させる必要があります。ただ、それだけでは財産の相続という面で他の相続人と不公平が生じてしまい、トラブルにつながってしまいがちです。そうした事態を防ぐために、後継者以外の相続人には金融資産・土地・建物などを分配して全体のバランスを調整することが大切です。

5-2.親族外承継のポイント

役員や従業員などと親族外承継をする場合は、何よりも後継者との意思疎通を早い段階から行っておくことが大切です。それを怠っていると、承継をしたあとに想定外のことをされてしまい、経営トラブルに陥ってしまったなどといった事態になりがちです。同時に、社内や取引関係者からの理解を得ることも重要になってきます。なぜなら、親族が会社を継ぐ場合は比較的理解を得られやすいものですが、それ以外の人間が承継すると反発を招くおそれがあるからです。そうならないように、時間をかけて周囲の人間からの理解を得ておく必要があります。

それから、忘れてはならないのが資金調達に関するサポートです。親族以外の人間を後継者に指名しようとしても、保障や担保などにマイナス要素があると、事業承継を引き受けようとしないおそれがあります。それを回避するには、あらかじめ金融機関との交渉をするなどして、後継者の債務保証・担保設定の負担を軽減させておくことが必要不可欠です。

5-3.M&Aを利用する際のポイント

M&Aを利用して事業承継を行う場合に問題となるのが、相手企業をいかにして見つけどのようにして交渉をするかといった点です。ただ、中小企業経営者の多くはそうしたノウハウを持ち合わせていません。そこで、弁護士事務所や金融機関などといった専門の仲介機関に相談することになります。また、相手先との交渉をする前に、会社や事業としての評価額を出しておきます。そして、なるべく早い段階で事業承継の条件や売却金額を仲介機関に伝え、相手企業との仲介を行ってもらうのです。

さらに、準備や交渉の際には情報が社内外に漏れないよう、細心の注意を払わなければなりません。万が一、情報漏洩が発覚すると、相手からの信用を失い、事業承継を成功させるのが難しくなってしまいます。

6.対策をしてスムーズな事業承継を

事業承継を成功させるには正しい対策が必須となります。そのためにはまず、誰に引き継ぐのかを決め、それがどのパターンの事業承継にあたるのかを理解することが大切です。そのうえで、後継者に合った対策を選択していきましょう。

 

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Originally posted 2020-09-03 20:30:51.